透明水彩での色塗りは計画的に行うべき その理由と色塗りのコツについて
透明水彩絵の具を使って色を塗るとき、色を載せる順番を考えたことはあるでしょうか?
ある程度透明水彩の性質を理解している方であればともかく、 あまり詳しくない人の場合、感覚的に色塗りしてしまっているかもしれません。
透明水彩ならではの透明感ある色味や、 塗り重ねによる美しさを活かしたいのなら、色を塗る順番を先に考えておく必要があります。
計画的に色塗りする必要があるんですよね。
今回は、なぜ色の順番を考えて塗る必要があるのかという理由について解説するとともに、色塗りの手順やコツについてお話ししたいと思います。
目次
・透明水彩の色塗りを計画的に行わなくてはならないのはなぜか?
意図しない色になる可能性があるから
重色?混色?どのように塗るか
一度塗ったらそれ以上明るくはできない
・透明水彩で色塗りする時の手順とコツ
白抜きする箇所を決めておく
色を決めて全体を下塗りする
陰影をつける
細部を描きこむ
マスキングインクをはがして仕上げ
・まずは色の基本を覚えること
透明水彩の色塗りを計画的に行わなくてはならないのはなぜか?
透明水彩絵の具で色塗りする場合に、なぜ先に色を塗る順番を考えておく必要があるのか?
その理由ですが…
その理由ですが…
意図しない色になる可能性があるから
不透明水彩と呼ばれる種類の絵の具では、異なる色を塗り重ねたとしても下の色が透けて見えません。
見えない=不透明なので、 不透明水彩と呼ばれます。
この絵の具の場合、基本的には上に塗った色が生かされるため、色を塗った後の完成図がイメージしやすいのですよね。
一方で透明水彩絵の具の場合、色を塗り重ねても下の色を完全に消してしまうことはできません。
下の色が透けて見えるんですよね。
また単に下の色が透けて見えるだけでなく、上に塗った色とあわさって別の色に見えるようになります。
例えば下に黄色を塗り、完全に乾かした状態で青色を重ねると、重なり合った部分が緑色に見えるようになります。
黄色のセロファンの上に青色のセロファンを重ねることで、黄色のセロファンが緑色に見えているような状態です。
不透明水彩絵具では、このような見え方はしませんよね。 黄色の上に青を重ねたら、黄色はみえなくなるはずです。
このように透明水彩絵の具では、色を塗り重ねることで下に塗った色の見え方が変わってきます。
ですので、どのような色の重ね方でどう色が変わるのかという知識を持って、色を塗っていく必要があります。
適当に塗ってしまうと、意図しない色が出てきて思い通りの作品に仕上げることができません。
重色?混色?どのように塗るか
前項で触れたことの続きとなりますが…
黄色を塗り、乾かした状態で青色を塗り重ねると、重なった部分が緑色に見える…といった具合に、 色を紙の上で塗り重ねる方法を「重色」と言います。
といっても上下の色が混ざったわけではありません。 上の色を透かして下の色を見ているような感じだというとわかりやすいでしょうか。
その「重色」以外にも、パレット上で直接色を混ぜて別の色にする「混色」という色の作り方があります。
黄色と青色の絵の具をパレット上で直接混ぜると、緑色になりますよね。これが混色です。
なぜ「重色」と「混色」について説明しているのか?ですが、 例えば絵を描くときに、青と黄の絵の具を使って「緑色」を塗ろうと思ったとします。
先で述べた通り、透明水彩には「重色」と「混色」という色の作り方があり、 どちらの方法でも緑を作ることはできます。
ただ、重色で作った色と混色で作った色とでは、同じ色でも見え方が大きく異なってくるのですよね。
なのでそれぞれの特徴を考慮して、色の作り方を変える必要があるんです。
重色の主な特徴
・混色には見られない、複雑な色味が出せる
・筆数が多くなると(重ねすぎると)暗く重くなりやすい
混色の主な特徴
・イメージ通りの色を表現しやすい
・色が単調になりやすい
・重ねなくても目的の色を作れるため、筆数を少なくできる
一度塗ったらそれ以上明るくはできない
透明水彩では下に塗った色を完全に隠すことはできません。
それが透明水彩の大きな魅力でもあるのですが、 「誤った色を塗ってしまうと修正ができない」という欠点にもなりうることを忘れてはいけません。
例えば、最初に濃く暗い色を塗ってしまうと、上から明るい色を重ねたとしても明るくすることはできません。
場合によっては作品の失敗にもつながりかねないため、 明るく表現したいところは塗り残し、いきなり暗い色を塗ってしまわないように気を付ける必要があります。
特に白色を表現する場合は注意が必要です。
絶対にというわけではありませんが、基本的には透明水彩では白色の絵の具は使いません。
白色を表現する場合は、何も色を塗らないことで紙が持つ白色を生かすようにするため、 少しでも色を塗ってしまうと修正が効きません。
一番最初に、まず塗らないところを決めてから塗り始める必要があります。
透明水彩で色塗りする時の手順とコツ
透明水彩絵の具を使った水彩画では、使う色の順番や使い方を決めて計画的に色を塗らないと、
イメージ通りの絵に仕上がらない可能性が高いです。
というわけで色を塗るときの手順やコツについて、簡単にお話しします。
なお、以下で説明している手順はあくまでも一つの方法であって、 絶対にこうしなくてはならなというものではありません。
とはいえ、初心者には実践しやすい色塗りの仕方だと思いますので、ぜひ試してみてください。
というわけで色を塗るときの手順やコツについて、簡単にお話しします。
なお、以下で説明している手順はあくまでも一つの方法であって、 絶対にこうしなくてはならなというものではありません。
とはいえ、初心者には実践しやすい色塗りの仕方だと思いますので、ぜひ試してみてください。
白抜きする箇所を決めておく
記事中でも述べたように、透明水彩では白い絵の具は使いません。
色を塗らないことによって「紙の白色」で白を表現するため、 まず最初に白で表現する箇所を決めておきます。
以下の記事でも説明しているように、塗り残すのが難しいところは、 先にマスキングインクを塗って色がつかないようにしておくとよいでしょう。
参考:透明水彩で白色を表現する場合のマスキングインク活用方法
あと基本、透明水彩は一度色を塗ると修正が効きませんが、 失敗の程度によってはある程度修正できる場合もあります。
その方法については、以下をご覧ください。
参考:失敗した水彩画のやり直しの仕方について解説
色を決めて全体を下塗りする
初心者ほど、パーツごとにバラバラに色を塗ってしまいがちですが、 その塗り方だと作品の雰囲気がちぐはぐな感じになってしまい、統一感が出ません。
まずは各所に使う色を決め、全体を下塗りしてください。
例えば風景の絵なら、「空」「山や草木」「建物」「道」といった具合に、大まかに色を塗り分けます。
なお、水彩は水を使う量によって色の濃淡が変わります。
緑一つをとっても、水の量を調整することで濃い緑にも薄い緑にもできるわけで、適当に緑を塗っていいわけではありません。
この時に塗る色は、白の次に一番明るいと思われる部分の色に合わせましょう。
明るい色を塗る理由は、一度暗い色を塗ってしまうと、もう2度とその箇所を明るくすることはできないからです。
なのでまずは明るい色を全体に塗って、その次に陰影を描きこんでいきます。(陰影については次項で説明)
均一な濃度で色を塗るのではなく、不自然にならない程度に大きくグラデーションを作るように塗ると、自然な感じに仕上がりやすいです。
注意点としては、色を薄くしすぎないことです。
暗い色を最初に塗ってはいけないと述べましたが、 かといって色を薄く塗りすぎるとあとから重ね塗りする羽目になり、筆数が増える原因となります。
透明水彩は筆数が増えるほど、色が濁って暗くなるため、色が薄くなりすぎないように注意してください。
陰影をつける
下塗りをしたら、次は陰影をつけていきます。
といっても、いきなり最暗部を塗るのは失敗の原因になるため避け、 ほどほどに暗い色でグラデーションを作るように塗っていきます。
暗く塗りすぎないことを常に意識しながら塗ってください。
なお、ここでは下地の色を施したあとに陰影をつける塗り方をご紹介していますが、 グリザイユ画法と呼ばれる、先に陰影をつけてから色を塗っていく絵画手法もあります。
油彩の古典技法のひとつですが、 あとから陰影をつけるよりも立体感が出しやすいため、油絵以外でもよく活用されています
ただ、絵画初心者にはやや難しいかもしれません。
グリザイユ画法を使う場合は、 最低でも光と影のでき方について理解していること、 また透明水彩で採用するのであれば、下の明暗を生かすような塗り方をする必要があります。
知識は必要ですが、慣れるとなかなか便利な塗り方ではあるので、 興味をお持ちの方は実践してみるとよいでしょう。
細部を描きこむ
陰影をつけたら、細部を描きこみます。
例えば砂利道や建物の壁、山、草木、川の水の質感など、各部分によって大きく異なりますよね。
単に色を塗って影をつけただけではのっぺりとした絵のままなので、細かい部分を観察しながら色を追加したり、 暗い影を追加したりして調整します。
下の色となじませたい場合は、いったん紙に水を引くと(筆に水をつけて塗る)きれいに塗りやすいです。
補足として、遠方の風景をあまりにも細かく描きこみすぎると、不自然な絵になることがあります。
どのような表現をするかは個人の作風にもよるため、細かく描くのが悪いわけではないのですが、 遠近感のある絵を描く場合は、遠方の風景は多少曖昧な表現にした方が自然に見えやすいですし、 水彩では描いている側も楽です。
参考までに…。
例えば砂利道や建物の壁、山、草木、川の水の質感など、各部分によって大きく異なりますよね。
単に色を塗って影をつけただけではのっぺりとした絵のままなので、細かい部分を観察しながら色を追加したり、 暗い影を追加したりして調整します。
下の色となじませたい場合は、いったん紙に水を引くと(筆に水をつけて塗る)きれいに塗りやすいです。
補足として、遠方の風景をあまりにも細かく描きこみすぎると、不自然な絵になることがあります。
どのような表現をするかは個人の作風にもよるため、細かく描くのが悪いわけではないのですが、 遠近感のある絵を描く場合は、遠方の風景は多少曖昧な表現にした方が自然に見えやすいですし、 水彩では描いている側も楽です。
参考までに…。
マスキングインクをはがして仕上げ
細部を描いたら、最初に塗ったマスキングインクを丁寧にはがし、
不自然なところがあれば調整してください。
この時、触りすぎないように注意します。
調整できたら完成です。
この時、触りすぎないように注意します。
調整できたら完成です。
まずは色の基本を覚えること
ここまで、計画的に色塗りしなくてはならない理由や、色塗りのコツについてお話ししました。
計画的に色塗り…といいましたが、単に色を塗る順番を決めるだけではなく、 思い通りの作品に仕上げるためには色の基本について理解する必要があります。
どの色とどの色を組み合わせると、何色になるのか…という点をわかっていないと、 おかしな色になったり、思ったよりも暗くなってしまったりと、 イメージとはかけ離れた絵に仕上がってしまう可能性が高いです。
とはいえ、絵画初心者が一昼夜で覚えられるような知識ではないため、 色についての知識をお持ちでない方は、水彩の混色について描かれた本を持っておくと良いでしょう。
例えば以下のような本が、わかりやすくて便利です。 いずれも、水彩の混色に関する知識についてわかりやすく解説した本です。
色の作り方について具体的な例を挙げて教えてくれているため、基礎知識をつけるだけでなく、 色辞典としても活用できます。
1冊持っておくと、色のことで悩まずに済むはずです。
計画的に色塗り…といいましたが、単に色を塗る順番を決めるだけではなく、 思い通りの作品に仕上げるためには色の基本について理解する必要があります。
どの色とどの色を組み合わせると、何色になるのか…という点をわかっていないと、 おかしな色になったり、思ったよりも暗くなってしまったりと、 イメージとはかけ離れた絵に仕上がってしまう可能性が高いです。
とはいえ、絵画初心者が一昼夜で覚えられるような知識ではないため、 色についての知識をお持ちでない方は、水彩の混色について描かれた本を持っておくと良いでしょう。
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